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結構、進んできた! かなと君も無事に回復傾向に持っていけてるし、月宮稲荷とときがはら医院が開所当初から繋がりがある所も掛けたし。 ともかく、元気で無鉄砲さのあるくう先生が書いてて楽しいのよなぁ。 部下の石橋さんも豪快なおじさんなんだけど、くう先生とは差別化できるように意識してるつもり。 石橋さんは現在でもご健在で、トアルト出版社の人での足りない部署を転々としてくれているよ。 今はかなと君の復帰のフォローもしてくれてる。
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2025-10-11 22:57
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●とある編集長の始まりの話 【ズレと記憶】  あれからという物、気持ちが落ち込んでも白い影は現れる事は無かった。 後に、あの時くう先生は何を持っていたのか聞いたところ、「月宮稲荷神社の魔除け札だ」と教えてくれた。 月宮稲荷神社とは、同じ市内にある大きな稲荷神社で県外からも参拝者が訪れるくらい有名な神社だという記憶がある。 実際におれも、取材で何度か訪れたこともあった。  白い影の一件の後、くう先生は結界代わりになるからと、その魔除けの札を部屋の四隅に貼っていった。 白い影が出現しなくなったのは、そのおかげもあったのかもしれない。 奴はなぜおれについてきたのだろう? 殺し損ねたおれを殺すために、ずっと後をついてまわり呪詛をばらまいていたのだろうか?  ◆ ◆ ◆  この一件から数日後に顔を出してくれた石橋さんに、病院での出来事を伝えると顔を曇らせて「置いていった封筒の中身、まだ見てねぇのか。」とサイドテーブルの上に視線を送った。 そういえば、色々とあり過ぎてすっかり忘れていたA3の封筒。 「見る暇が、無かった。」と言うおれを見て、 「そりゃそうだ。」と軽く笑って返す石橋さん。 A3の封筒の中身は、観光協会の職員の目撃証言と事故直後の状況をまとめた資料だったらしい。  石橋さんに手伝って貰って体を起こしてから、封筒の中身を一緒に見てトンネルでの出来事を振り返る。 資料の内容は以前石橋さんが話してくれたものと一緒であった。 覚えている範囲で資料とおれの記憶を照らし合わせてみるといくつか違う点があった。 観光協会の職員の証言には、白い影の存在と崩壊前の強い揺れが無かった。 細かい点で言えば他にも違いはあれど、一番大事なポイントが二つも違う事に疑問が沸き上がる。 「もう一度、あのトンネルに行きたい。」 石橋さんに頼むが、彼は首を横に振って 「かな坊が退院する頃には、完全に埋め立てられちまってる。」 と残念そうに言った。 おれが悔しがっていると、石橋さんは「実はな。」と自分のカバンから書類の束を取り出す。 それは、崩壊したトンネルの写真だった。 「やっと、気持ちも落ち着いてきてリハビリも進んできてる所に、こんな、トラウマほじくり返すような写真、どうかと思ったんだが・・・。」 歯切れが悪く言いながら写真を並べて説明を始めた。  崩壊後のトンネルの写真は、出口付近が完全に土砂で埋もれていた。 救助の為に土砂を退けたのだろう、一部掘ったような跡がありその地面はどす黒く染まっていた。 おれと望月さんの血を吸った地面なのだろう。 その風景にぞっとし息を飲んだ瞬間、気管に何か入ったようでむせ返る。 「かな坊!?無理すんなよ?」 心配そうに背中をさすってくれた。 痛みと苦しさに涙目になりながらも、何とか呼吸を落ち着ける。 「まだ、ちょっとした時に気管になんか引っかかりやすくって・・・。ごめん、続けて?」 本当にいいのか?と言いたげな表情で、写真の説明を再開する。  トンネルの崩落は、老朽化したレンガの天井だけでなくその上の山の部分も大きく崩壊していたようだ。 崩壊前に、観光協会の職員と望月さんは、レンガの天井が崩れかけていることに気が付いて、おれの事を呼び戻そうとしていたことも分かった。 それでも戻ってこなかったおれを引き戻そうと、望月さんが中に入り救助しようとした。 結果、二人で崩落に巻き込まれて望月さんは帰らぬ人となったわけだが。 「かな坊。本当に二人の声が聞こえてなかったのか?天井から小石の落下もあったようだが、それも気が付かなかったのか?」 石橋さんの言葉に、なんて返せばいいのか迷いながらも 「・・・白い影しか目に入らなかった。・・・周りの声は聞こえなかった。引っ張られて初めて、周りが見えたんだ・・・。」 事実をありのまま伝え、俯くしか出来なかった。 石橋さんも「うぅん・・・。」と唸って腕を組んで考え込んでしまった。  しばらく考え込むような沈黙の後、 「本物の怪異に魅入られちまったってことだよな・・・?それも、そいつは病院にまでついてきて、未練がましくかな坊を狙って来た。・・・院長はそのことを受け止めて、こんな仰々しい結界まで張ってくれた、と。」 石橋さんは、二人で話した内容を簡単にまとめながら部屋に貼られたお札を見た。 「おれだって、信じられなかった・・・。でも、おれは実際に・・・見たし、襲われたんだ。」 だんだんと語尾に自信が無くなっていくおれに、無言で頭を撫でた石橋さん。 「この件は、俺がもう少し調べてくる。だから、かな坊は体をしっかり治す事!いいな?」 現状のおれでは何も役に立てないことも分かっていたので、素直に頷く。 「じゃあ、また来るからな。」 と、石橋さんは荷物をまとめて病室を後にしようと扉に手を掛けた。 なんだかその姿に強い不安を覚え 「石橋さんまで、居なくならないで・・・。」 そのままストレートに気持ちを言葉にしていた。 それを聞いて石橋さんは、おれの所に戻ってきてくれた。 安心させるような笑顔を向けて、 「居なくならねぇよ。」 と乱暴におれの頭を撫でた。 その言葉にホッとした瞬間、涙がボロボロ零れて止まらなくなった。 ぎこちなく腕を動かし、涙を拭ってると 「あーあー。そんなに泣くなよ。仕方ねぇ編集長様だぜ?」 と茶化しながら、石橋さんはおれの涙を拭ってくれた。  結局、涙はしばらく止まらず石橋さんはおれが泣き疲れて眠るまで側に居てくれたのであった。 それからという物、石橋さんは情報収集の合間を縫って頻繁に顔を出してくれるようになり、くう先生にも「だいぶ、落ち着いたな!」と太鼓判を押して貰えるくらい精神面でも安定したのであった。  ◆ ◆ ◆
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2025-10-11 22:51
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●とある編集長の始まりの話 【院長と不思議な記憶】  意識が安定したことをきっかけに、おれのリハビリが本格的に始まった。 始めは深呼吸をするだけだったが、それだけでも術後の傷口が痛んだり、胸の内側から来る突っ張る感じにまだ慣れない。 くう先生は「時間を気にせずに、ゆっくりやっていこうぜ。」と毎度励ましてくれていた。 意識がはっきりしない時期からお世話になっていただろう、看護師の守岡さんとも、ちゃんと挨拶することができ彼女も「ようやく、暗闇から出れてよかったわ。」と優しく微笑みながら労わってくれた。  ◆ ◆ ◆  初めてのリハビリ後に、ベッドで疲れてぼーっとしていたおれに、くう先生が話かけてくる。 「お疲れさん。久しぶりに体を動かそうとした感想は?」 「・・・思った以上にしんどくて、辛いかも。」 特に呼吸が苦しいの、一番しんどいと伝えてから、ずっと思っていた疑問をぶつけてみる。 「おれ、助けられた時、どんな状態だったの?」 くう先生は少し困ったような表情をしながら少し考え 「そうだなぁ。一言で言えば、生きてることが奇跡的な状態だった。ショッキングな内容だから、少しぼかしながら伝えるけどな。」 と怪我の詳細を伝えてくれる。  落下してきた瓦礫を全身で受けたことによる打撲や骨折。 特に酷かったのは、左足の脛の中心当たりに受けた衝撃で骨がぽっきり折れていたり、胸に強い圧迫を受け、肋骨が何本も折れてその一部は肺に突き刺さっていたり。 幸い、ヘルメットが頭への衝撃を受け止めてくれたおかげで、脳の異常は見られなかった事。  くう先生は、おれの様子を見ながらゆっくりと言葉を選んで伝えてくれる。 「呼吸がしずらいのは、損傷した肺がまだ治り切ってないからなんだ。右胸に違和感や痛みが強いのは、胸を開いて手術した影響だろうな。」 くう先生は話し終わると、心配そうな顔でおれの様子を伺っている。 「教えてくれてありがとう。本当に、ギリギリの所を望月さんが繋いでくれたんだなって分かって・・・。」 溢れて来た涙を、拭おうと腕を上げようとするもほとんど上がらなかった。 その代わり、くう先生が優しく涙を拭ってくれた。 「石橋さんは、生きて望月さんの思いを繋げろっていうけど・・・。きっと無理だよ・・・。」 リハビリをしたから余計に感じた、自分の無力感が気持ちを滅入らせていく。 「・・・かなと君はどうしたい?」 「おれ・・・?」 くう先生は頷いて、おれの返事を待っててくれている。 おれはどうしたいんだろう? 考え始めようとした時に、視界の端に白い影が現れて「しぬんでしょ?」と声をかけてくる。 その頭に響くような声に導かれるまま「しにたい。」とぽつりとつぶやいた。 くう先生は困ったような表情をしてから、 「これから、一緒に考えていこうぜ。」 と優しく言った。 白い影はなんだか満足そうに、視界の端に居座り続けている。  その後は白い影が気になって、くう先生が何か声を掛けてくれているが一向に頭に入ってこない。 無意識に視線も白い影を追っている。 なんだか、トンネルのときと同じような気がする。 そんなことを漠然と考えていると、 「かなと君?何見てるんだ?」 と、くう先生が視界を遮るように目の前に現れた。 白い影と視界が切れたからか、体に自由が戻ってきた。 「あいつが、白い影が・・・。トンネルから・・・ずっと、ついてきてる。」 部屋の隅を指さしながら伝える。 くう先生は指さす方を見て、少し首を傾げたようだったが 「よーしわかった!先生に任せとけ!」 にかっと笑って、病室を勢いよく出て行った。 なんなんだ?くう先生にも白い影が見えてたのか? 部屋の隅の白い影も、心なしか落ち着かない様子で病室の扉の方を見ている。  暫くするとドタバタ走る音が聞こえて、バタン!と扉を開ける音がする。 「待たせたな・・・!白いやつは・・・どこだ!?」 くう先生は息を切らせつつおれに白い影の居場所を聞いてくる。 おれは、まだ部屋の隅に居るそいつを指さした。 「よ~し!覚悟しろよ~!」 と、軽く腕を回すとずんずん白い影のいる部屋の隅に向かって歩いていく。 白い影は心なしか壁に追い詰められて焦っているようにも見える。 「こいつを食らいやがれ!」 ポケットから紙を取り出し、思い切り白い影の額に叩きつけた。 すると、白い影は霧散して消えたのだ。 叩きつけた勢いのまま、くう先生は勢いよく壁に手をつくこととなった。 「・・・消えた?」 ポカンとしながらおれが呟く。 「効いてよかったぜ~!あ~、思い切りやり過ぎた・・・。」 思いきりついた手を軽く振りつつ、どや顔でおれの方を見た。 「先生・・・。見えてたの?」 「いんや。視えてないぞ?かなと君が教えてくれた場所に適当に当たりを付けただけだ。ん?もしかしてドンピシャだったか?」 さらっとそんなことを言うもんだから、おれはぽかんとしてしまった。 「そうだ、かなとくん。本当は何がしたい?」 邪魔者は居なくなったぞ?っと言いたげな表情でおれを見るくう先生。 「・・・望月さんと、石橋さんと作った・・・。あの編集部に、戻りたい。戻って・・・。戻って、望月さんの教えてくれたこと、活かしてあそこで本作って・・・。えぇ・・と。だから・・・。」 纏まらないが、心の中にある自分なりの贖罪の方法をくう先生に伝える。 くう先生は、静かに言い終わるのを待ってくれていた。 「また・・・あの場所で・・・望月さんに、許して貰えるまで・・・本を作りたい。」 「さっきのより、ずっといいな!」 ガハハハッ!と豪快に笑ってくれた。  ◆ ◆ ◆
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2025-10-11 21:52
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かなと君の過去、結構膨大な量になっててどうしようかなぁってなってる。 語りたいことを詰め込もうとすると、どんどん増えていくのよな。 無限語り編始まってしまったな???
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2025-10-11 20:47
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くう先生は今でも天狗信仰の復興についての研究は進めているんだろうな。 この事は、かなとくんと当時の看護師のおばあちゃんくらいしか知らないだろうし、この研究が終わった後もしかしたら、かなとくんと一緒に本にするのかもしれないね。
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2025-10-11 08:43
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●とある編集長の始まりの話 【沈む青年の記憶】  パンフレットには、この病院について書かれており、現代から離れて心休める空間をテーマに建築された精神科の病院であることがわかった。 その中でひと際異彩を放っているのが「ここは、超常現象または、未確認生命体の関係する事象などに巻き込まれ、精神や体を壊してしまった人の為の病院です。」という一文だ。 ・・・それって、病院として成り立つのか? そういや、おれが初めての患者だと言っていたな。 うん。この件について深く考えるのは止めよう。  パンフレットとは別のもう一つの資料は、数枚のレポート用紙がホチキスで止められている簡素な物であった。 タイトルには「東野山周辺地域の土着神信仰について」と書かれている。 書き手はくう先生らしい。 東野山とは、この病院の裏にある山の事でこの山の所有権も院長のくう先生が持っているそうだ。  ゆっくり内容を追っていくと、東野山には戦国時代よりも前から天狗信仰があった歴史や逸話があった。 約100年前から急に天狗の信仰が弱まっていき、現在はほとんど語られる事が無くなっている。 それと時期を同じく、東野山の元々あった豊かな恵みやその周囲の農作物の育ちの良さなどが、急に失われていった事実と重なる。 実験的に、この病院を建てることになった時に一緒に天狗を奉るための社の建設も進め、過去に行われていた祭事の再現をすることと決めた。  オカルト的な事象に対しての研究資料の序盤と言った印象を受けた。 おれがオカルト本を作っていることを知って、何かのきっかけになればと持ってきてくれた資料なのだろう。 確かに面白いとは思った。 このような事になってなければ、共同研究でもしてその研究を本にしようと思っていたかもしれないが、今のタイミングではこれをネタに何か書こうという気にはなれなかった。 隙あらば、後悔の念が心の壊れた隙間から溢れて止まらない状態なのは変わらないから。  手元にあった資料をすっかり読み終わると、待ちかねていたように負の感情が溢れかえり、おれの思考をあっという間に支配していく。 自分では抗えないこの感情に抵抗する気力もなく、悲しみと後悔がおれを深い闇に引きずり降ろしていった。  ◆ ◆ ◆  意識が浮上した頃には、夕日が赤く部屋を照らしより一層レトロな雰囲気を醸し出していた。 やっと、負の感情がおれを解放したのか。 そう思いながらゆっくりあたりを見渡す。 意識を失う前に読んだパンフレットや資料はサイドテーブルに置かれている。 ただ、サイドテーブルにはそれだけでなくA3サイズの大きな封筒が置かれているのに気が付いた。 何かが増えているのに気が付いて手を伸ばすが、まったく届かない。 はぁ。と深くため息をつくと胸が突っ張るように痛んだ。 「ぐぅ・・・。いてぇ。」 自分の声じゃないような掠れた声が漏れた。 体の自由が奪われて、思考も奪われて。 それでも生きている自分が惨めに思えてきて、また涙が溢れてきた。 どうせ何も出来ないのなら、死んでしまいたい。 でも、今のままでは死ぬことさえ出来ない。 いっそのこと、誰か一思いに殺してほしい。 静かな病室は、おれのすすり泣く声で満たされる。 その声は自分の無力さを表してるように感じて、気が滅入る。 息苦しさを感じても、もう深く息を吸おうとも思えない。 だんだんと酸素が足りなくなってきたのだろう、視界がぼやけ始めて来た。 ぼやけた視界の中心に、トンネルで見かけた白い人影が現れる。 何か話しかけるでもなく、それはただただそこに居るだけだった。 やがて、視界は完全に暗くなり意識も手放した。  ◆ ◆ ◆  もう二度と起きなくてもいいと思っていたのに、また意識が戻ってしまった。 まだぼやけた視界をゆっくりと動かしあたりを見渡すと、誰かがじっとこっちを見ているのに気が付いた。 その人はおれと目が合うと少し表情が明るくなり、何か話しかけてくる。 声は聞こえるのだが、何を言ってるのかがわからない。 その大きな聞き馴染みのある声の主は、おれの反応が悪いのがわかると喋るのをやめて俯いてしまった。 ああ、その声なんだか心地よかったのに。 そんなことを思ってると、やっと視界と思考にかかった靄が取れてきて世界がはっきりしてきた。 俯いてる男性をしっかり見れば、石橋さんだと分かった。 石橋さんの顔を見て、ふとトンネル出発前に言われた言葉がよみがえる。 「かすり傷一つでもつけて帰ってきたら許さねぇ。」 石橋さんは、文句を言いに来たのだろうか? 望月さんを殺した責任を果たせと、言いいに来たのだろうか? もしかしたら、おれを殺しに来てくれたんじゃないか? その思考にたどりついた時、視界の端に白い影が映る。 「いしばし、さん。」 掠れる声で、彼の名前を呼んだ。 おれの声に反応して、石橋さんは勢いよく顔をあげた。 「かな坊!そうだ、俺だ。わかるんだな?」 ようやく聞き取れた彼の声は、なんだか明るい気がする。 「やくそく、まもれなかった。」 おれは、謝罪の意味も込めて言葉を紡ぐ。 白い影はずるりと視界の端から這い出ておれの体を這いずっている。 「・・・今はそんな事どうでもいい。かな坊が生きてるだけで、俺は嬉しいんだ。」 白い影は石橋さんの言葉を遮るようにおれの顔まで這い上がり、視界を遮って「おまえはしね」と言った。 「おれ、しんだほうが」 「バカ言うんじゃねぇ!!!お前の命はな!望月のじいさんが命掛けで守ったんだ!死んだ方がよかったなんて言って見ろ!?その度、俺は言うぞ!お前は生きなきゃいけねぇんだ!じいさんの思いも背負ってるんだ!生きろ!惨めでも生きろ!這いつくばってでも生きるしか、じいさんの思いに答える術はないと思え!!!」 白い影に誘導されたおれの言葉は、石橋さんは感情のすべてを乗せた叫びにかき消された。 その一瞬で、頭を支配していた負の感情が一気に吹き飛ばされた。 白い影も一緒に吹き飛ばされて、視えなくなった。 目の前には、涙でぐしゃぐしゃの石橋さんの顔があった。 「いきて、いいの、か?」 「いいに決まってるだろ!!!」 一気に込み上げてきた言葉では説明できない感情が溢れて、止まらなくなり、おれは声をあげて大粒の涙を流していた。 石橋さんは、何度も頭を撫でたり、おれの涙を拭いたり落ち着くまで側に居てくれた。  泣いた後はなんだかスッキリした気持ちと、今までとは違う心地の良い疲労感を感じた。 「いしばしさん。」 ウトウトしつつ、泣いて余計にガラガラに掠れた声で側で見守ってくれている人の名前を呼んだ。 「なんだ?眠くなったなら、寝ていいぞ。」 と、言いながら、石橋さんは優しく頭を撫でてくれる。 その心地よい暖かさの感覚に抗えずに、おれは眠りに落ちていく。  次に目覚めた時は、翌日の早朝なのだろう。 ゆっくり、ゆっくり朝日が部屋を照らし始めている。 全てを受け入れる事はまだ難しいが、全てを諦めて何もしない事は止めようと思った。 まずは事実と向き合うことから始めよう。 長い事止まっていた時間が、ようやく進み始めたのだ。  ◆ ◆ ◆
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2025-10-11 00:42
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